虫
一駅向こうから自分の家まで帰るのに最近ハマっている。
夕暮れ時の北西の空は綺麗で一番星が私に語りかけてくるから。
といえば嘘になる。かなり嘘になる。
一駅向こうにあるこのバーの前を通りたいから。
ということをもちろん公にはしていない。
赤を基調としたこのバーは、私の心を落ち着かせない。
きっとあなたはここでのんでいる。赤が似合う、あなたは、ここで。
この間のことは全然覚えてない。
覚えてないんですけどって言ったら
「そう…なんや…」と言われた。
そのテンテンにある、ニュアンスを教えてほしい。
このバーに着くまでに
私は死んだ虫を見た。
踏み潰されて死んだのか、
死んでから踏み潰されたのか。
どちらでもいいけど
雨にまで濡れたその虫。
なぜか脳裏から消えないまま。
そして私はどう未来を描くか?考えた。
いつまでに結婚して、とか
いつまでに子供産んで、とか、
そのようなビジョンがほとんどない自分に気がついた。
私は、何かを成し遂げたくて生きている。
今やっていることはもちろん。
もっと何か、カタチにできる人間になりたい。
バーで話したことは
きっとこんな真面目な話じゃなくって。
そんなことを考えてた。
考えながら、
たわいもない話をふざけてしていた。